COMMUNICATION 調査・分析

宿泊事業者「愛犬同伴旅行者の顧客セグメント・施設間回遊調査」

ペット同伴専用施設と、一部客室でペット同伴を受け入れる施設。双方を運営する宿泊事業者に対し、両施設の利用者層の違いを明らかにし、施設間の回遊を促進する条件を特定する調査を実施しました。定量調査とクラスタ分析を組み合わせ、事前仮説では捉えきれなかった顧客構造を可視化しています。

宿泊事業者「愛犬同伴旅行者の顧客セグメント・施設間回遊調査」
Client
宿泊事業者(社名非公開)
Project Date
2025.10.01
Services
事業戦略コンサルティング調査・分析
Deliverables
調査設計書、アンケート設問設計、調査レポート(基本集計・クロス分析・クラスタ分析)、顧客セグメント定義、回遊促進に向けた訴求方向性提案

Background

ペットを家族の一員として迎える価値観が定着し、愛犬とともに旅する需要は継続的に拡大しています。宿泊業界では、ペット同伴を前面に掲げた「専用施設」と、既存ホテルの一部客室で受け入れる「一部同伴可能施設」が併存し、それぞれに異なる顧客層が形成されつつあります。

本プロジェクトのクライアントは、その双方を運営する宿泊事業者です。専用施設で安定した稼働を支える優良顧客を、一部同伴可能施設へも回遊させたいという成長戦略上の課題を抱えていました。

その前提には「専用施設の利用者は旅慣れた愛犬家であり、一部同伴施設の利用者はライト層である」という仮説がありました。一方で「むしろライト層こそ、手厚いケアを求めて専用施設を選んでいるのではないか」というカウンター仮説も社内に存在していました。どちらが実態に近いのかを見極めることが、本調査の出発点です。

01. 仮説の構造化とリサーチクエスチョンの設計

まず、クライアント内にあった仮説とカウンター仮説を明文化し、検証可能な問いへと分解しました。

「旅慣れ度」「ライト層」といった、社内で共有されながらも定義の曖昧だった言葉を、旅行頻度・経験年数・しつけレベル・情報感度など観測可能な変数へと置き換えます。何を確かめれば意思決定できるのかを先に固めることで、調査を「情報収集」ではなく「判断のための検証」として設計しました。

02. 定量調査の設計・実施

直近数年以内に愛犬同伴での旅行経験を持つ層を対象に、インターネットアンケート調査を実施しました。

回答者属性、愛犬に関する基本情報、旅行経験値、旅行行動、施設選好、価格感度、情報収集行動、ブランド認知まで、セグメント定義に必要な変数を網羅的に設計。専用施設・一部同伴施設それぞれについて「選ぶ理由」と「選ばない理由」を対になる設問構造で取得し、両者を同じ土俵で比較できる状態を担保しました。

03. クロス分析による仮説検証

専用施設利用者と一部同伴施設利用者を軸に、基本属性・旅行行動・価格感度・情報収集行動をクロス集計しました。

両者の間には確かに差異が存在する一方、その方向は当初仮説の想定とは異なるものでした。さらに、専用施設利用者の内部には旅慣れ層と初心者層が混在しており、施設タイプによる二分法では捉えきれない実態が浮かび上がります。この発見を受け、当初のスコープに加えてセグメント内部の深掘り分析を追加で実施しました。

04. クラスタ分析による顧客セグメンテーション

「専用派/一部派」という施設タイプの区分を超えた実態を捉えるため、非階層クラスタ分析(k-means法)を実施しました。

属性・旅行頻度・経験年数・旅慣れ度・宿泊行動・施設選好・価格感度など多変数を用いてクラスタリングを行い、クラスタ数を複数パターンで試行。シルエット係数、Calinski–Harabasz指数、Davies–Bouldin指数の3指標で妥当性を検証し、最も解釈性と安定性の高い分類を導出しました。

得られた各クラスタについて、基本像・旅行スタイル・施設利用傾向・経済感覚・愛犬との関係性を整理。そのうえで、クラスタごとに「回遊が起きにくい要因(バリア)」と「回遊が起きる条件(ドライバー)」を対で言語化し、施策に接続できる粒度まで落とし込みました。

Impact

施設タイプによる二分法では見えなかった顧客構造が明らかになり、社内で共有されていた前提そのものの再定義につながりました。

回遊促進とは単なる施設タイプの置き換えではなく、セグメントごとに異なる「旅行の動機と頻度の再設計」であること。この視点の転換により、訴求メッセージ、プラン設計、媒体選定までを一貫した根拠に基づいて検討できる基盤が整いました。定義された顧客セグメントは、以降のマーケティング施策におけるターゲティングの共通言語として機能しています。