猫市場は安定した成長を続けており、猫を中心にした消費や文化的な広がりが一段と強まっています。近年拡大している「推し活」の構造を応用することで、コミュニティ形成やグッズ消費、イベント参加、社会貢献といった要素を通じ、新たな需要と高い参加意欲を生み出す可能性が高まっています。本稿では、その具体的な適用可能性について検討します。

猫市場の市場規模と成長トレンド

日本のペット市場全体は拡大を続けており、2023年度のペット関連総市場規模は約1兆8,629億円(前年度比104.5%)と推計されています。中でも猫市場は安定した成長を見せています。猫の飼育頭数は2017年に初めて犬を上回り、2023年には約906.9万頭と犬より200万頭以上も多くなりました。犬の飼育数が減少傾向にあるのに対し、猫は微増・横ばいで推移しており、この安定した飼育数が市場の底堅さを支えています。またペットフード市場では2017年度にキャットフードの売上構成比がドッグフードを逆転しており、新商品の投入や売り場拡大もあってキャットフード市場は拡張傾向にあります 。コロナ禍以降はペットを家族と捉える意識が高まり、一頭当たりの支出増加やプレミアム志向により猫向け高付加価値商品が市場成長を牽引しています。総じて、猫の飼育数こそ大きな増減はないものの、猫関連商品の市場規模は緩やかな拡大基調にあり、安定した需要と潜在力がうかがえます。

推し活の経済的影響

「推し活」とは、アイドルやキャラクターなど自分の“推し”を積極的に応援するファン活動を指し、近年その経済的インパクトが注目されています。推し活による市場規模は主要ジャンル(アニメ・アイドル等)だけでも約8,000億円規模と推計され 、関連消費を広く含めた年間出費ベースでは3兆5千億円に達するとの調査結果もあります。この巨大な推し活経済圏では、ファンはグッズ購入やイベント参加、遠征(推しのために遠方へ出向く旅行)など多岐にわたる消費行動を行います。例えば主要カテゴリ別ではアニメが約3,000億円と最大の経済効果を占め、次いでアイドル産業がそれに続いています。アニメの場合、作品から派生する原作漫画・ゲームの購買や、ゆかりの地を巡る「聖地巡礼」による観光消費まで波及し、総合的な市場規模拡大につながっています 。アイドルの世界でも、CD購入特典による投票企画やライブチケット競争などを通じてファンが熱狂的な消費を行い、その熱量が経済効果を生み出しています。

推し活の成功事例としては、ファン心理を巧みにビジネスに取り入れたケースが各業界で見られます。例えばカラオケ業界のパセラでは、オフ会需要に特化した「推し活パック」を導入し、特定の作品・アーティストに限定せず幅広いファン層に“推し活しやすい場”を提供することで集客に成功しました 。また大手CDショップのタワーレコードは、推しカラーのグッズ展開などファンの嗜好に寄り添った商品ラインナップを用意し、推し活グッズ市場で成果を上げています。これらの事例に共通するのは、ファンコミュニティの熱意を理解し、その熱量を受け止める商品・サービスを提供している点です。推し活によって培われたコミュニティの結束力や購買意欲をビジネスに結びつけることで、企業は新たな収益機会とブランドロイヤルティ向上を実現しています。

推し活の構造と猫市場への応用可能性

推し活が生み出す熱狂の構造は、大きく「コミュニティ」「グッズ消費」「イベント参加」「貢献消費」の4つの要素に分類できます。この構造を猫市場に応用すれば、猫好き・飼い主層のエンゲージメントを高め、潜在需要を顕在化できる可能性があります。以下に、推し活の各要素と猫市場での対応例を整理します。

要素1:コミュニティ(仲間意識・交流)

  • 推し活での例:ファンクラブやSNS上でのファン同士の交流・情報共有。推しへの愛を語り合い、コミュニティを形成する。
  • 猫市場への応用:飼い主同士・猫好き同士がつながるオンラインコミュニティやオフ会。SNSでの「愛猫自慢」や情報交換、猫オーナーズクラブの結成による愛好者コミュニティ醸成。

要素2:グッズ消費(関連商品の購買)

  • 推し活での例:推しの公式グッズや推しカラーのアイテムを購入。推しを日常で感じるため、身の回りを推しにちなんだもので揃える。
  • 猫市場への応用:猫に関連するグッズの購買拡大。例:猫をモチーフにした雑貨やアパレル、愛猫の写真入りオリジナルグッズ、ペット用プレミアム用品など「猫推し」商品の充実。飼い主はペットのために質の高い商品を選び、自身も猫モチーフの商品で日常に猫要素を取り入れる。

要素3:イベント(体験・参加)

  • 推し活での例:ライブや握手会、聖地巡礼など推しに直接触れたり世界観を共有するイベントに参加。ファン仲間とともに熱狂を共有する。
  • 猫市場への応用:猫好きが参加できるイベントの展開。例:猫カフェ巡りや猫カフェ主催イベント、猫写真展・雑貨即売会への参加、愛猫との参加型イベント(オンラインコンテストや撮影会)などを開催し、猫好きの熱量を集める。

要素4:推しへの支援(貢献消費)

  • 推し活での例:推しの活躍を支えるために出費を惜しまない。例:人気投票のためにCDを大量購入、遠征して経済的にも推しを後押し。
  • 猫市場への応用:猫の幸せや業界発展につながる消費。例:愛猫の健康のためのクラウドファンディングへの出資

上記のように、推し活の仕組みを猫市場に当てはめることで、猫好きコミュニティの活性化→関連グッズ消費の拡大→イベント体験による熱狂の場づくり→その熱意を支援消費に結び付けるという好循環モデルが描けます。既に、SNS上では飼い猫をアイドルさながらに発信する「猫アカウント」が若年層を中心に人気を博しており、猫を媒介としたコミュニティが形成されています。また、猫雑貨の祭典「ニャンフェス」や2月22日の「猫の日」に合わせたキャンペーンなど、ファンイベント的な動きも活発化しています。こうした土壌をさらにビジネス戦略として体系立てることで、猫市場における推し活的盛り上がりを創出できるでしょう。

猫市場における推し活ビジネスモデルの適用

近年では、人気猫の写真集やグッズがベストセラーになるなど、猫そのものがコンテンツ化し収益を上げるケースも増えています。企業がSNSで話題の看板猫やキャラクター猫とコラボし限定グッズを販売するといった試み(例:「まるいねこフェス」での人気猫コラボグッズ販売は、ファン熱を売上と社会貢献(売上の一部を保護猫団体に寄付)に結びつける新たなビジネスモデルです。

猫市場に推し活的ビジネスモデルを展開する具体策として、以下のようなアイデアが考えられます。

ファンコミュニティの組織化と会員サービス

猫愛好家を組織化したオンラインサロンや会員クラブを創設し、限定コンテンツ(獣医師によるセミナー、人気猫のライブ配信など)を提供します。コミュニティ内で情報交換やイベント企画を促し、顧客ロイヤリティと参加頻度を高めます。

猫版公式グッズ&コラボ商品の開発

推し活のように、猫をテーマにした魅力的な商品ラインナップを拡充します。例えば、猫好き向けファッションやインテリア雑貨、家電メーカーと提携した猫柄コラボ製品などを投入し、日常生活の中で“いつでも猫を感じられる”商品体験を提供します。また、愛猫の写真や名前を入れられるオーダーメイドグッズサービスを展開し、飼い主が自分の猫を推す楽しみを後押しします。

イベントマーケティングの強化

リアルとオンライン双方で猫に関するイベントを定期開催します。リアルでは先述の猫フェスや猫写真展、猫カフェとのタイアップイベントを拡大し、来場者が実際に交流できる場を提供します。オンラインではフォトコンテストや動画コンテストを開催し、優秀作品をカレンダーや写真集として商品化するなどUGC(ユーザー生成コンテンツ)をビジネスに転換します。これにより愛好家の参加意欲を刺激しつつ、新規コンテンツも創出できます。

猫を介した社会貢献型ビジネス

推し活がファンの消費を推しの支援に繋げているように、猫市場でも消費を保護猫支援や動物福祉に結び付ける仕組みを構築します。例えば、関連商品の売上の一部を動物保護団体へ寄付する仕組みや、企業公式の“推し猫”を決めてその猫に紐づくチャリティー企画を展開する、といった方法です。消費者にとっては推し猫を応援することが社会貢献になるため満足度が上がり、企業ブランドのイメージ向上にも寄与します。

以上のような戦略により、猫市場の潜在需要を掘り起こし、推し活的な熱量を伴った新たな経済圏を創出できると考えられます。猫は単なるペットの枠を超えて文化的アイコンとなりつつあり、その存在は人々に癒しと喜びを提供しています。BtoBの視点では、こうした消費者の感情価値をビジネスに昇華させることで、従来のペット用品市場の枠組みを越えた収益機会が生まれるでしょう。今後、推し活モデルを取り入れたマーケティング施策によって、猫市場はより一層の活性化と市場拡大が期待できます。その際にはコミュニティ醸成と顧客体験の充実を軸に、ファンに「共感」と「参加」を促す戦略を取ることが鍵となるでしょう。企業にとっては、猫好き消費者の熱意を味方につけることで、新規市場の開拓と競争優位の確立につながるはずです。

出典リスト

当記事で使用したデータは、あくまで複数の調査結果・報道を組み合わせて総合的に引用しています。特に金額規模(円換算)や前年比などは為替レートや発表タイミングで変動しますので、更新タイミングにご注意ください。