近年、十分な社会化トレーニングを受けられないまま成長してしまった犬たちが増加し、問題行動が顕在化していると言われています。こうした中で注目されているのが「パックウォーク」です。複数の犬と飼い主が一斉に歩くスタイルが、社会化不足による問題行動の改善策として期待されています。ここでは、パックウォークの目的・効果、注目が集まる背景、そして企業や自治体がこの取り組みに関与する可能性について解説します。
パックウォークについて
パックウォークとは
パックウォークとは、複数の犬と飼い主が一団となって散歩することを指します。特にしつけの一環として行われる場合、犬同士を無理に挨拶させるのではなく、前を向いて並んで歩くこと自体が大きなポイントです。犬同士や飼い主同士が自然に交流する場を提供し、犬の社交性を育むと同時に飼い主の意識も高める狙いがあります。
犬にとってのメリット
- 社会化の促進
他の犬や人間との接触機会が増え、見知らぬ犬への恐怖心や攻撃性が軽減されやすい さまざまな匂いを嗅いだり周りを観察したりすることで刺激を受け、犬のコミュニケーション能力が向上する
- 運動不足・ストレス解消
集団で歩くことで自然と歩調が早まり、運動量も増える 様々な犬との並走が刺激となり、脳が活性化して「退屈」や「ストレス」からくる問題行動を予防しやすい
- 自信の向上
臆病な犬でも、列の後方から少しずつ他犬との距離を縮められる 他の犬が落ち着いている姿に安心感を得て、吠えや威嚇行動が減少しやすい
飼い主にとってのメリット
- 愛犬との絆を深める
犬と一緒に新しい体験を共有することで、お互いの信頼感が強まる
- 飼い主同士の情報交換
散歩をしながら、しつけや健康管理、生活上の悩みなどについて気軽に話し合える
- 飼い主自身の自信向上
問題行動があった犬でも、パックウォークを重ねるうちに落ち着いた歩行が身につくことで、飼い主のモチベーションやリーダーシップ意識が高まる
コロナ禍以降に注目された背景

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外出自粛や接触制限の影響で、多くの子犬が本来ならば受けるべき社会化の機会が減少しました。
- 子犬教室への参加率の低下
パンデミック中は、従来の子犬教室に参加する犬が大幅に減少したという報告もあり、これにより犬同士の交流不足が問題視されています。
- 問題行動の増加
社会化不足のため、初めての犬や人に対して過敏に反応してしまう、吠えやすくなる、散歩中に怯えて動けなくなるなどの問題行動が目立つようになりました。
- 分離不安や運動不足
在宅勤務の増加で長時間家にいる犬が、分離不安や運動不足に陥る例も見られ、これがさらに問題行動を引き起こす要因となっています。
こうした背景から、比較的安全な環境で犬たちの社会性を取り戻す方法として、パックウォークが再評価されています。ドッグトレーナーや獣医師などの専門家も、この手法を用いた社会化トレーニングの重要性を指摘しています。
海外と日本での事例や取り組みの違い

海外の事例
欧米では、飼い主同士がSNSやオンラインフォーラムを通じて自主的に集まり、定期的なパックウォークが行われています。
- 自主開催のグループ散歩
比較的カジュアルに行われ、犬の運動不足やしつけの一環として自然な形で実施されます。
- 公式イベントの存在
たとえば、アメリカンケネルクラブ(AKC)などの団体が、グループ散歩イベントを推奨する取り組みを行っている点も特徴です。
日本の事例
日本では、パックウォークは主に専門家(ドッグトレーナーやドッグスクール)が中心となって企画されるケースが多く見られます。
- 専門家主導のイベント
神奈川県や兵庫県などで、引っぱり癖や恐怖心に悩む犬向けの講習会やリハビリ散歩イベントが開催されています。
- 地域交流の推進
イベントには地域住民との交流や、公園清掃などの社会貢献が取り入れられ、犬のしつけとともに地域コミュニティの活性化にも寄与しています。
共通点と特色
どちらの地域でも、パックウォークは犬の社会性向上や運動不足解消、飼い主同士の交流を促す点で共通しています。しかし、海外はカジュアルな自主開催が主体であるのに対し、日本は専門家の指導を受けた形式が強調される傾向があります。
企業や自治体が関与する可能性

パックウォークは、個人や愛犬家グループだけでなく、企業や自治体が地域コミュニティづくりやペットに関する啓発活動に活用できる取り組みとして注目されています。
企業による取り組み
- ブランド向上や顧客獲得
ドッグフードメーカーやペットショップが「◯◯パックウォーク」などの無料イベントを開催愛犬家同士の交流を促しながら、自社製品のサンプル配布やアンケート調査の機会としても活用できます。
- サービスの多様化
ドッグトレーナーが運営する教室でパックウォークを提供する事例や、チャリティ目的で参加費を動物保護団体への寄付とする形も見られます。
自治体による取り組み
- 地域マナー向上
都市部での犬のフンの放置や無断のノーリードといった問題を解決するため、自治体や有志団体が「おさんぽマナーパックウォーク」を実施し、ルール遵守や地域美化を促進しています。
- 公共サービスとしての展開
東京都杉並区のように、区が主催して定員制のパックウォークイベントを開催し、犬の健康増進やマナー向上を図る事例も存在します。
企業や自治体がパックウォークに関わることで、犬と飼い主を中心とした地域コミュニティが形成され、ペットに対する正しいマナーや愛護の意識が高まる効果が期待されます。
まとめ:パックウォークの意義

パックウォークは、コロナ禍で浮き彫りになった犬の社会化不足という課題に対して、有効な解決策となっています。犬が集団で歩くことで落ち着きを身に付け、初めは戸惑いながらも少しずつ自信を取り戻していく過程は、飼い主との絆の強化にもつながります。海外でも日本でも、その効果が認められ、プロのトレーナーから一般の愛犬家まで幅広く実践されています。犬と飼い主が笑顔で共に歩くことで、地域全体のペット環境やコミュニティが向上し、「犬って素敵だね」という温かい交流が生まれます。
ぜひ、機会があればパックウォークに参加してみてください。愛犬にとって新たな世界を広げる一歩であり、人と犬がともに過ごす豊かな時間を体感できるはずです。
参考文献・出典
当記事で使用したデータは、あくまで複数の調査結果・報道を組み合わせて総合的に引用しています。特に金額規模(円換算)や前年比などは為替レートや発表タイミングで変動しますので、更新タイミングにご注意ください。
- OC Pup Scouts, 「The Power of Pack Dog Walks: Socialization and Exercise Combined」
- Gooddoggie, 「Benefits of Pack Walking」
- わんちゃんホンポ, 「パンデミックパピーの社会化と予想される問題についての研究結果」
- GORON, 「『パックウォーク』のすすめ – 2」
- Localprime, 「愛犬との絆を育てるメソッド~パックウォーク~(イベント後日談)」
- AKC (American Kennel Club), 「Group Dog Walks: Tips for Preparing Your Pup for a Pack Walk」
- おさんぽマナー向上委員会, 「おさんぽマナーパックウォーク」公式サイト
- いぬのきもち, 「地元に密着した保護活動に取り組む『Pooch Dog Rescue』の活動とは」
- 「杉並区立ドッグラン広場」 公式サイト